世界の築地の繁栄は、昭和の飲んだくれ食通親父の我儘が育ててくれた面もあるだろう。そんな親父の姿を想像してください。
海鼠(なまこ)があふれる 築地のお店は
誰もが驚く顔をする
鰺(あじ)鯛(たい)肝(きも)竹輪 言葉に出来ない
今夜の冷たい酒を酌む
こらええ気持ちだ たそがれ時から
店のこの隅で酔いは回る
四六時中も「呑め!」と言って
店の中へ連れて行って
忘れちまった なんもかんも
呂律(ろれつ)回らない
ツナをかけた鱠(なます)出して
ナスはどこへ盛(つけ)るのか
旨く煮付けて 鯛(たい)や鮃(ひらめ)
灰汁(あく)はそのままに
秋ナス焼くだけ 大根切るだけ
からすみ挟んだふりをした
つまみを挟んで割り箸掲げて
今では相当酔っている
とうに夜が更けた閉店時は
お店のオヤジが俺に迫る
四六時中も「呑め!」と言って
店の中へ連れて行って
忘れられない 蛤(はまぐり)鮑(アワビ)
夜はマテ貝
ツナをかけた鱠(なます)出して
ナスはどこへ盛(つけ)るのか
上手く煮付けて 鯛(たい)や鮃(ひらめ)
灰汁(あく)はそのままに
こんな客にも目くじら立てず
またどうぞ!と言って欲しい
明日も来るぞ オヤジよ覚悟
涙の帰宅よ
北海道男(きたみみちお)作