ドローンに見るインフラの変遷と未来

 ドローン操縦士になりました。65歳からの残りの人生、何か新しいことを始めたくて挑戦しました。

 講習、訓練の最中、時代の流れに感心し、狼狽しながら、インフラについて考えました。
 衣食住ならびに社会の発展を支えるインフラの基本は物流、情報、エネルギー。
 情報インフラは、口伝え→遠吠え→狼煙→早馬→飛脚→郵便→電報→電信→電話→・・(この間インフラは多岐に分裂しそれぞれ単独であるいはコラボレーションして発達)・・・→インターネットと発展を続け、今やインターネットは従来の情報インフラを包括するプラットフォームとして君臨する。今後このインターネットを凌駕するインフラが出てくるのか、5Gによる情報伝達力はさらに増して行くであろうが、インターネットに変わる次の情報インフラについて、もう65歳の頭にはそのイメージが浮かんでこない。
 エネルギーは、陽→火(木材→化石)→電気((水力→火力→原子力→自然(風、陽、地熱、水))と変遷。持続可能性と自然親和性と出力を調和させる挑戦が続けられている。この分野においては電力をいかに得るか、金属電池や空気電池、水素電池、宇宙空間発電等々の発電分野の多様化と分散化と、全個体電池や全ポリマー電池などなど、蓄電池分野でのとんでもない発明が最も期待される分野ではないかと思われる。結局はこのエネルギーインフラが他の基幹インフラをも支えることともなり、とても極端に言えば電気は最終的に万象の父、神となる、既になっているとも言えるだろう。
 そして物流インフラは、獣道→踏み分け道→河川、海路、街道、トンネル、地下道→道路、鉄路、空路などと変遷を続け、伴って、背負子→橇、小舟、馬車、牛車などの獣車→自動車、汽車、旅客船、フェリー→大型トラック、高速道路、高速鉄道、タンカー→ロケット、ジェット機、ヘリコプターなどの物流ディバイスが発達してきたが、今後情報インフラ、エネルギーインフラの発達に支えられた究極の物流インフラとして目指しているのが、ドローン形式の物流ディバイスと言えるだろう。
  いずれ、有人ドローン(ドローンとは基本的に無人機を指すので、とっても矛盾した言い方だが、わかりやすいので人が乗り操縦するドローンを有人ドローンとあえて表現するが)、つまりドローンタクシー、マイカーならぬマイドローン、ドローンバス、ドローントラック、空飛ぶ倉庫 等も登場することだろう。
 ドローンによる物流がこれまでの物流と決定的に違うのは物流が本当の3次元物流となることだ。
 これまでも、空中物流としてはヘリコプターや航空機が、地下においては地下鉄が、水中では潜水艦が活躍しているが、いずれも、夫々の次元においてはどちらかと言えば平面、つまり二次元的な中に存在するものと言える。ところが現在進化が続くドローンの世界は、水中から高空までを3次元的に自由に飛行できる。その機動性とフレキシビリティーは従来の物流デバイスの比ではない。
 ドローンの世界で主導権を握ることは世界の物流インフラの主導権を握ること。国策として取り組む程の価値があるジャンルだ。
 
 山肌に小さな集団で生活する村落の多い日本では、災害の情報収集、救援物資の配達は間違いなくドローンが主役となる。郵便などは殆どがネットに変わる中、また人口減少高齢化で人手不足が常態化する中で、はがき一枚を山奥に人手で届けることは非効率すぎてできなくなるだろう。
 もっと大きな視点で考えると、重量物や多人数を運べるドローンまでが普及してくると何が起こるか? 道路や鉄道がいらなくなるのだ。利用度の低い道路や橋、トンネル等をメンテナンスする必要もなくなるり、自然の破壊も防止できる。
 
 だからこそ日本はドローン先進国になるべきなのだが、気になるのは今の日本社会全体に蔓延しつつある「許容性の薄さ」と「自己保身」だ。この点について詳しくは別コラムで私感を述べるが、結果として、ドローンの普及と機能拡大のチャンスを狭め、スピード感を失ってしまっている。
 利便性の高い機器が武器や凶器になる原因は人の心の中にある。ドローンもまた便利であるがゆえに、便利で強力な武器にもなりうる。機器を武器や凶器として使用した者は厳しく罰せられるべきであるが、一方正常な活用を厳しく制限することにまでつながる規制はするべきではない。それは自らが好んで世界の流れに遅れをとっているように見えてくる。残念!
2019.4