2021年コロナ後の未来(あるべき内製化)

 「自国第一主義」「アンチグローバル」を唱えようとしているのではない。

 大戦、温暖化に起因する現象を含む大災害、人口大爆発、極端な富の集中と格差、グローバルパンデミック、、、、、と人類存続が脅かされる事象にさらされ続けている今日、人間の本質、国家の本質から見た、世界の様々な問題を解決し皆が共存できる手段としての姿。

 テクノロジーがこれだけ発達したがゆえに出来る持続可能な社会、国家、世界の在り方。それについての現時点での掘り下げを述べてみる。今日のコロナ明日のコロナ対策に皆が追われ、思考の余裕が無いように見えるからだ。

 

そのキーワードとして「安全保障」「内製化」「支援外交」を取り上げる。

 

「安全保障」

 「安全保障」といえば、「敵国の侵略に対しての自衛力を高めること」ともっぱら武力的(最近はサイバー攻撃も同等に考えられている。)な面が第一に浮かぶ傾向が高い。しかしながら安全保障を「健全な存続が脅かされる状況への対応力」と考えると、軍事的な側面はごく一部の側面であり、実際には世の中のあらゆるジャンルにかかわる。今流行りのSDGs(持続化)も本質は安全保障である。人であれば肉体と精神の安全性、集団・国家であれば構成員の安全を保障できる体制、地球であれば地球上の生物の自然な安全性を担保するものと言って良いか。

 いずれにしても発端は生物としての人間の肉体、精神の健全状態の継続。

  1. 食の安全保障(十分なカロリーを安全な食材から摂取できること。)
  2. 衣の安全保障(寒暖差や物理的衝撃等から肉体の安全を保つために必要な着衣等を継続的に入手できること。)
  3. 住の安全保障(外敵や自然現象から家族や団欒を守ること。)
  4. インフラの安全保障(集団社会を維持するための循環器を機能させること)

 これらが、安全保障の肝であり、その他の条件はこれらを実現するために必要な条件と言える。

 この四点をさらに保障する本当の肝がある。

 それは人口だ。人口が増加している場合は経済の拡大と共に4つの安全保障を自然に実現することも可能だが、人口が減少、特に少子高齢化の社会では、4つの安全保障を自然な形で実現することは出来ない。

 残念ながらある見方によっては結果として人口増加を集団で意識的に放棄しているとも思われるわが日本。

海外からの実質移民(色々な名前を付けた色々な手法を講じて居るが)でこれを乗り越えようとしているが、これは食料、資源、情報に続き人口という国の根幹までを海外依存症にしてしまうことになる。

 そしてこれまで、依存症になった状態で食料、資源、人口を吸い上げてきた国々は夫々の安全保障を実現できているのか?

 真の安全保障を実現するためには「内製化の推進」という必要性が浮かんでくる。

 

「内製化」

  安全保障の本質を突き詰めていくと自ずから行き着く先はあらゆるものの内製化である。

 急激に様々なテクノロジーが進化した今日、かつてよりも日本国の内製化可能率は確実に上昇しているはずだ。

 内製化を放棄せざるを得なかった(結果として放棄と同じようになってしまった)要因を考えてみると。

  • 人口増と所得増
  • 農業人口の減少と農地の減少
  • 価格競争力の低下
  • 技術力の限界
  • 戦敗国である立場
  • 国連主義の崇拝

 明治維新以降当時の時代背景は、あらゆる分野で海外依存を高めていった。

 急激な西洋化と近代化といわれるもの、これは生産能力以上に消費が先行するものであった。そして消費は減少されることが出来ないものである。ましてや人口増が続く時代、産業技術の発達により消費はますます拡大し、勢い食料、資源の海外依存性が高まり、とどのつまりは戦争という手段を用いても、世界の食料資源争奪戦へと参戦していく。その結果どうなったか。勝っていればおそらく収奪の加害者、主役としてますます海外依存性(その途中では自国の領土になるのかもしれないが)が高まっていたであろう。敗戦国となった日本は技術等は一部収奪される側として、そして資源や食糧は依然として収奪する側として国際分業型欧米経済原理の中で海外依存症を強めていく。

 だが現在の技術と情報の質、量は当時のそれではない。また、人口減少により、依存症の必要性を肯定する根拠が薄れている。現在の成長と消費の拡大は富の偏重を生んでいる場合が多く、社会の本当の効率が長期的な視点で追及されたものではない。

 今日の技術水準は、

 食においては、品種改良、養殖技術の進化、水耕栽培や都市部の屋上壁面緑化、ジオフロントの活用による地下農園。加工、保存技術の発達。種子

 衣、住においては間伐材の合成技術や古来の国内資源を利用した新素材の開発や新工法の開発等々。

 インフラ、資源においては、何といってもエネルギーと資源、太陽光、風力、波力、潮力、水力、地熱、バイオマス、メタンハイドレイド、、、、日本列島とその領海はこれらを真に内製化するには充分な広さを有している。

 これに、様々な先端テクノロジーが加われば、限りなく100%に近い内製化が達成可能ではないか。

 

 また人口減の国家ではあるが、すべての国民が役に立つ役割を演じることが出来る社会体制になれば、生産性が落ちることなく、経済の成長維持を伴うことも夢ではない。

 この内製化を推進するのに大切なのは、価値観の変換だ、この150年で当たりまえと刷り込まれたあらゆる価値観を原点に返って組み立てなおすことが必要だ。今当たり前のように思われている効率は多面的に見ると必ずしも効率的ではないケースが多々あるのだ。

 長期的かつ多面的な視点による新しい価値観(かつて否定された価値観の見直しも含めて)があらゆる場面に反映されなければならないだろう。

 

「支援外交」

 内製化の促進は、場合によっては「自国主義」「国際協調の否定」ととらえられ過去の戦争への悪しき記憶と結び付ける向きもあるが、かつてのそれは独りよがりの内製化であり、国際的に見た場合に賛同を得ることは難しい。真の内製化を安定して実現させるためのポイントは、他国(世界各国)の内製化を肯定し支援することにある。これは日本の魂に近い共存の価値観だ。自国の内製化の促進は他国の内製化の促進によって担保されるものであるということを言いたい。

 そもそも、世界の争いは有史以来、衣食住に関する内製化が不十分であるがゆえに起きている。地球は多くの国家に細分化され、重要な諸資源の大半は地球上で偏在するためだ。

 内製化で解決するのではなく、略奪(表向きの経済協力も含む)で成長してきた。

相手に対しても、あたかも相手国の為のように思わせながら、特定の要人あるいは自分たちの利益を優先して他国を依存症にし、むしろ自立の力を削いでゆく戦略であった。内製化を侵略、収奪によって実現してきたとも言ってよい。いまや、戦勝国が真の内製化を許さない体制だ。

 本当の外交=属国にすることでも、文化や民族のアイデンディティーを変換させ自国への依存症にすることでもない。

 「相手の内製化を支援することとそれでも不可能な部分について補い合うこと」世界各国が個々にこのような関係を意識すれば、人類の存続、地球の秩序は維持され続けていくだろう。

 

2021.5