梅花藻 醒井(さめがい)宿 中山道

 中山道69次61番目の宿場町 琵琶湖に到達する直前 清らかな湧き水の流れる地蔵川沿いに醒井宿がある。

 

 見ものは旧家の街並みももちろんだが、何といっても「梅花藻(ばいかも)」 

 

 キンポウゲ科の梅花藻は梅バチ藻ともいわれ、文字通り梅の花と同様に五枚の花弁で白い可憐な花を咲かせる。生息は清流に限られるため東京などに住んでいてはまずお目にかかれない。

 

 最初から梅花藻を目当てに訪れた訳ではないが、梅花藻の開花時期は初夏から初秋、訪れた6月後半は運よく開花の盛りである。本当に久しぶりの対面であった。

 

 地蔵川は、宿はずれの加茂神社境内下から湧き出す「居醒の清水」が川となり、醒井延命地蔵を祀る地蔵堂の前を流れ、やがて他の川に合流して琵琶湖に注ぐ。

 この「居醒の清水」がどれほどの清水かというと、明治の北白川能久親王が台湾にて重病となり冷水を欲したときに、水がない。参謀の鮫島中将が「あらばいま 捧げまほしく 醒井の うまし真清水 ひとしずくだに」と詠んだところ親王が満足し、にっこりとほほ笑んだ、といいう程の真清水である。

 

 地蔵川両岸には街道宿らしい江戸の雰囲気と明治大正の名残が混じり、丁度新婚の撮影が行われていたが、いい雰囲気だ。

 川端の茶屋ではコンニャク田楽のような大きな葛餅が、ラムネと共に湧き水で冷えている。150円と安くて旨い。川岸で子供らが水遊び、清流に揺れる梅花藻を観ながら梅雨空の下頬ばると、「あ~ 日本の夏」。

 

 この醒井宿のもう一つの名物は「ハリヨ」、湧水の20度以下の清流にのみ生息する、今では貴重な日本固有の淡水魚。川の中に探すのは中々難しいが、川岸には各家の前に夫々水くみ場があるので、そこへ降りて根気よく探すとみることも可能だろう。

 

 偶然立ち寄った宿場町、ホッとするような素敵な観光地となることだろう。